『2 IN 1 ~10TH ANNIVERSARY EDITION~』
KIRINJI
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ジャンル |
DOMESTIC
Rock / Alternative / others
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アイテム
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album
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品番 |
OMOCD-0042 |
価格 |
¥2,100 (tax in)
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トラックリスト
①風を撃て /
②野良の虹 /
③水色のアジサイの上 /
④茜色したあの空は /
⑤冬のオルカ /
⑥水とテクノクラート /
⑦休日ダイヤ /
⑧風を撃て(instrumental) /
⑨野良の虹(instrumental) /
⑩水色のアジサイの上(instrumental) /
⑪茜色したあの空は(instrumental) /
⑫冬のオルカ(instrumental) /
⑬水とテクノクラート(instrumental) /
⑭休日ダイヤ(instrumental)
コメント
10 周年、おめでとう。
キリンジ幻のアルバム「ツーインワン」 デビュー10 周年を記念し遂にリイシュー。TD マスターテープからの 完全リマスタリング & アルバム全曲のインストゥルメンタルトラックをボーナスとして収録! キリンジ&プロデューサーの冨田恵一(冨田ラボ)によるコメント付き。ライナー:岡村詩野 KIRINJI ファン必携のアルティメイト盤 完成。 覚えづらい。展開が読めない。なのにどうしようもなくポップで、どうしようもなく甘い。リズムは複雑でアレンジは込み入っていて、
言葉もそうそう簡単に共感を呼びそうなものではなく、要するにリスナーに媚びることは決してなく常に凛としている。でも、紛うことな
きポップ・ミュージック。私たちのすぐ傍らで奏でてくれるポップ・ミュージック。キリンジは今も昔もそんな存在だ。
近年、AOR やフュージョンやサルサやジャズ・ロックといった、 4 ビートとか8 ビートだけに固執しない非ロック的な音楽からの影響を
感じさせるアーティストが日本でも増えてきている。それだけに、 若いリスナーの中にはもしかするとあまりピンと来る人も少ないのかも
しれないが、10 年ほど前、キリンジがシーンに登場してきた時は誰もがハッと目を覚ますほどに刺激的だった。当時は、"はっぴいえんど
以降の空気を孕んだ新感覚の日本のロック"というニュアンスで"フォーキー"なんて言葉と共に紹介されることが多く、くるりやサニー
デイ・サービスあたりと肩を並べるような存在感を示していたが、 思えば、キリンジは、いわゆるレア・グルーヴ以降の日本にようやく現
れたアダルト・オリエンテッドなポップ・ミュージックだったのだろう。
今でこそバンド編成で録音し、ステージに立つ彼らだが、最初はほとんどの演奏を彼ら自身と、自らの仕事を"トリートメント"として表
現するプロデューサーの冨田恵一がこなしていた。サポート・ミュージシャンを必要とするにしても、腕の立つ熟練しか起用しない。そこ
には、ヘタでも味があればいい、要は気合いとセンスだ、といった、DIY 精神を誤解したような、言ってみれば演奏力をないがしろにする
傾向に対する猛烈な反発と、安っぽいバンドごっこには決して従うまいといったある種の頑固さがあったと思う。そういった環境の中で、
いかにして現代的で人なつこいポップ・ミュージックを創出できるのか。キリンジの存在が新しかったのは、まさにそういう難題に何気な
く挑戦したバンドだったからだ。乳房とかセックスという抵抗を招きそうな言葉に、モダンで上品な観点をユーモラスに与えた最初のバン
ドでもあった。 今も忘れない97 年夏、インディー時代に初めて取材で会った堀込高樹と泰行の二人は、あまり多くを語らない、朴訥と
した青年だった。少年っぽさを残した弟はクイーンが好きと意外な発言をして、眼鏡をかけたインテリ風情の兄はデヴィッド・T・ウォーカー
のギターが好きと言った。ヘンな連中だ、と思った。当時、筆者は既に仕事で様々なアーティストに取材で話を聞く機会を多く持っていた
が、その後、彼らよりキャリアのあるアーティストたちの多くがキリンジの登場に共感、危機感、羨望を抱くようになり、彼らがメジャー
に移籍し、さらなる活躍を見せるようになってからは、彼らの存在に刺激を受けたような若手も続々登場してきたのをよく覚えている。キ
リンジに何度も取材で会ったことがある、と話すと、どんな人たちなのか?どんな感じで曲を作っているのか?あの言葉の感覚はどんな本
から得たものなのか?などと興味津々に身を乗り出してくる人も少なくなかった。そして、そのたびに私は心の中で回答するのだった。「そ
うやって人のことを気にしないような連中だ」と。
本作は、99 年にリリースされた『2 IN 1』のリイシュー盤。その『2 IN 1』自体、97 年にナチュラル・ファンデーションからリリース
された2 枚のマキシ・シングル『キリンジ』『 冬のオルカ』をカップリングさせたものだったので、今回のリイシューは二度目の再発とい
うことになる。とはいえ、マスタリングはもちろん最新。10 周年にあたってそれぞれの収録曲のインストゥルメンタル・ヴァージョンも追
加され、14 曲入りというまさに豪華仕様のアニバーサリー・エディションになる。ちなみに、1〜4 が『キリンジ』で、5〜7が『冬のオ
ルカ』に収録されていた。 「 風を撃て」「野良の虹」「冬のオルカ」はその後のメジャー・デビュー・アルバム『ペイパードライヴァーズミュー
ジック』に新録で収録されることになったが、それ以外のナンバーはここでしか聴けないものとして珍重されてきた。今でも初期からのファ
ンの間では3や7の人気が高い。個人的にも本作(に収録の1〜7)と『ペイパードライヴァーズミュージック』には格別の思い入れがあ
る。すっかり貫禄がついた近年の彼らにはあまり会うこともなくなったが、キリンジに出会っていなければライターとして今の自分はなかっ
た、そこまで断言してもいい大切な存在だ。
冨田恵一と仕事で会うと、今も時々、初期キリンジのレコーディンの話になる。中には面白いエピソードもたくさんあるのだが、ここで
はそれは封印しておこう。音源だけで体験できるものがすべてであり、 ポップ・ミュージックのロマティシズムは今も昔もそのちょっとし
たストイシズムの中にあるからだ。今回、初めて本作を手に取った方々同様、私も店頭で初めて見て購入し、ただただ繰り返し繰り返し聴
いては彼らのファンになった。キリンジは、そんなことを私たちに改めておしえてくれた最後の砦だったのかもしれない。10 周年、おめでとう。
2008 年2月 岡村詩野